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PBW、シルバーレインのPC、鬼頭菫のブログ。興味の無い方は回れ右。Cの知り合いの方はご自由にリンクどうぞ。
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何も妙な事などは無い。




「菫ちゃーん!」
「……はい?」

下校途中に名を呼ばれて、少し考えて立ち止まる。
視線の先にはいつもの様に笑ってぶんぶんと手を振る玖凪の姿があった。
肩に掛けた鞄を揺らしながら小走りで寄ってくる相手に手を上げて返す。

「丁度良かったわぁ! GT行きましょ、GT」
「GT、何処のかな!」
「それなんだけど、新しい所見付かったっていうじゃない」
「……神戸?」

幾ら何でも、と続ける前に玖凪は軽く首を振った。
地団太を踏む様な仕草だが、わざとらしさも無用な子供っぽさも感じさせないのは固有の才能と言っても良かろう。

「そうなのよう! お休みの日くらいにしか行けないじゃないのねぇ!? ちょっと期待外れだから近いアミーゴでも行こうと思って」
「ああ、なるほどね、はいはい、構わないよ!」

ありがとねぇ、と笑う玖凪と共に爪先を反対方向へ向けて歩き出した。
学園から少し距離が開いた所で紙袋を外す。
奇異な格好も珍しくない銀誓館周辺では見咎められた事は今の所無いが、駅前は流石に目立ち過ぎよう。
鞄にしまうその間に、玖凪がぽつりと言葉を漏らした。

「――そういえば菫ちゃん、最近ちょっと、良将ちゃん変じゃない?」
「……そう?」

風が予想以上に冷たくて少し目を細めながら首を傾げる。
確かにこの間、屋上で会った時は少々おかしかったが、その後は常の通り。
むしろ平素より明るいと思える。
玖凪は少しだけ眉根を寄せて頷いた。

「うん。何だか少し、無理してるみたいってゆうか……気のせいかしら」
「さてねぇ、私はその辺りは何とも!」

虚勢や空元気も時には効果がある。
何を考えてそうするかまでは知らないが、元より心情の裏を読むのが得意で無い――と言うよりも読むのを半ば放棄している自分には、本人がそうしているのだから、とそれ以上尋ねる気も無かったのだが。
目線を斜め下に向ければ、玖凪は真面目に考えている様子だった。
茶化す気は元よりなくとも、何を言うのも出来ないので黙っていたが、相手は自然と結論を導き出した様で首を振る。

「……まあ、様子見て本人に聞いてみるのが一番よねぇ?」
「そうだね、言わなければ分かんないってマクギタールの友人も言ってたよ!」

少し早足で前に出て、振り返って問う玖凪に笑えば、相手も何のてらいも無く笑った。

「相変わらず、菫ちゃんのお友達の調子はいいのかしら!」

「調子は、」

いつも通り、と答えようとして、耳元に走る音にこめかみに指を当てる。
ああ、こっちも、普段よりは。


「元気だよ、煩い位」
「…………?」

玖凪の笑いが、きょとんとした様な表情に変わる。
少しだけ妙に感じて首を捻った。

「何か?」
「……菫ちゃん、大丈夫?」

訝しそうな声音で、玖凪は顔を覗き込んでくる。
何を言われているのか分からずに数度瞬いた。

「? 何が? 私も元気だよ!」
「――本当に?」

軽く腕を掴んで揺する相手に、益々首を捻る。
自分の返答は何かおかしかっただろうか、と頭の中で反復するが、異常に心当たりは無い。
だから大丈夫、と頷く。

「うん! ……何で?」
「……ううん。そう、ならいいの」

繰り返すと玖凪は、未だ釈然としていなさそうな顔ながら手を引いた。
少し頭が痛いくらいだねぇ、と言うと、飴玉を手に握らされる。

「風邪が流行ってるみたいだから、気を付けてねぇ」
「――どうも! 玖凪クンもね!」

あたしはちゃんと気を付けてるもの、と笑顔に戻った玖凪に笑い返し、飴玉をコートのポケットへ落とした。



全く持って、何時もの通り!

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鬼頭・菫(おにがしら・すみれ)
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学生
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