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(さあジアータのククク湯視を乗り越えたところでッロウが)
(ストリッキのプラテスは下端の寄りにじあああああだから波並ならぬ紗室は最新の削像を使用して気類無き鞘の代替を求めているのだから……ギイイイイイイイイイ笑い声はなんともヨシュクテルの響きに似ていて瓶の中の唇も囀りを紡ぐから僕らはざざざざrururururu)
「あー……」
普段よりも煩い『親愛なる友人』の声を聞きながら寝起きの頭を振った。
どうして今日はこんなに煩いのだろう、と思うが、年に一度くらいはこんな日がある。
カレンダーを確認するが3月の24日、祝日でもなければ今年は土日ですらない。
そして知り合いの誕生日でもなければ特別な日でもない。
(ねえねえ知っているかいあれはね実はハシヤ党の策略だったのさ知っているだろう第七提督のあの得意げな顔を)
(知らないよ)
(つまりざあありりりざざざキャットルの果てに辿り着いた彼らは星先の剣先を見付けた事例をご存知?)
(知らないよ)
(ざざざりいりりりりりりざざざりざりキキキャハあの目の耳がさささビルディヴァの橘画のざざ)
色々と煩くて聞き取れない話題に肩を竦めた。
こういう時は適当に聞き流しておくのが良いのだ、十年来聞き続けている鼓動と似た『声』との付き合い方などそこそこに心得ている。
水で顔を洗えば多少は落ち着くか、と洗面台で鏡を見て一瞬目を見開いた。
顔の半面に酷い怪我を負っている姿が見えたのだ。
反射的に手を伸ばすが、皮膚に触れるよりも先に視界が今見たものを否定する。
当然だ、そこまで酷い怪我を負っていて普通に過ごせる筈も無い。
何より鏡で一瞬見た姿は片目が潰れていたが、自分は両目で世界を見ている。
触れた皮膚には傷の一つもなく、いつも通りの感触。
どれだけ寝惚けているのか、と鏡に手を伸ばした。
何処か違和感を感じて冷たい板の向こうの自分の輪郭を指先でなぞる。
手前にある自分の手と、奥の左右反対の顔のどちらかにしか焦点は合わせられず、どちらかがぼやけてしまう。
手の甲に、指先に焦点を合わせると、奥の顔が笑っている様に見えた。
無論、いつものように口元は微かな笑みを刻んだままだからそれ自体は可笑しな事ではないのだが。
「私は菫」
呟くと鏡の中の顔も同じように唇を動かす。
青紫の瞳が此方を見ている。
「私は菫」
延々と繰り返してきた確認の言葉。
耳元で『声』が笑って同意する。
ああ本当は今日が何の日だかなんて覚えている。
だけど特別な日などでは有り得ないはずだ。
思い出すのが苦しい訳もない、事実は事実でそれ以上では有り得ない。
ただ、今日だけは、高い所が嫌いだ。
死んでいたのは自分ではないかと錯覚するから。