PBW、シルバーレインのPC、鬼頭菫のブログ。興味の無い方は回れ右。Cの知り合いの方はご自由にリンクどうぞ。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
(それはきっと結局の所は何でも無い如何でも良い事)
椅子を引く音。
座る母親。
前に座る二人の子供。
朝食を取る子供の片方に向かい、母親は笑顔で話し掛ける。
「ああ、そうだ、もうすぐあなたの誕生日ね。今度のお休みには何処に行きたい?」
「え?」
「何処でもいいのよ、動物園? 水族館? 好きに言ってちょうだい?」
「……あ」
「どうしたの? ああ、遊園地がいいの?」
「……違うよ、お母さん、今日は」
「今日? 今日は無理だけど、次のお休みね。プレゼントは何がいい?」
「違うよ、お母さん、今日は──兄さんの誕生日だよ」
語り掛けられた弟は、多少の困惑を込めて遮られた言葉の続きを告げた。
一言も喋らない片割れは、ただ黙々とフォークを動かしている。
話を聞いているのかいないのかも分からない。
そして母親は応じた。笑顔で。
「へえ? そうだったかしら。──それが?」
何の感慨も無く、変わらぬトーンで放たれた返事に弟は一瞬黙り込む。
「……兄さんは?」
「ああ、そんなのは気にしなくていいのよ」
「…………」
「いいのよ、あんな子は。気にする事ないの。お母さんが好きなのは、あなただけ」
「お母さん……」
「さあ、欲しいものを考えておいてね、お母さん、ちゃんと準備するから」
「……うん……」
──困惑した表情で、僅かに隣を見る弟に、「菫」は小さく笑って返すのが常だった。
気にするなという様に。
口の端にほんの僅か、嘲りを含んで。
(それはきっと何ら変わる事の無い朝の風景)
PR
Comment